きく臓の落語歳時記     Vol.96 (2016年 睦月)



【申(猿)と笑い】


今年は 丙の申(ひのえのさる)「丙」は盛んな様 陽気な姿を表し「申」は伸と同意。物事が進歩発展し 成熟する「丙申」は外に伸びようと発展し 物事が盛んに動く年回りとのことです。楽しみな年です。大いに飛躍したいものですね。


申年の落語は やっぱり「猿後家」ですね。


何の不自由も無い大店(おおだな)の後家さんが居た。でも、一つだけ気にしているところがある。それは少しだけ顔が猿に似ている。だから後家さんの前では「さる」とか「えてして」の付く言葉は禁句であった。ある時、植木屋が庭で仕事をしていると、奥様が出てきて、何か木を植えたいが何が良いかと訪ねると、つい「サルスベリの木」が良いだろうと言ってしまった。一瞬固まった植木屋は土下座して謝ったが、許してもらえず・・・それから3日経っても後家さんは怒りが収まらなかった。そこに源さんがやって来て小遣い銭ほしさに奥様に声を掛けた。


「おかみさん〜」と部屋に何度も声を掛けたが居ないので帰ろうとするのを、奥様がとがめて「さっきからここにいるじゃないか」と詰め寄ると「あ!奥様でしたか。てっきりお千代さんかと思いました」、「やだよ、あの子は京の水で洗われた京美人だろ、それに、まだ十七だよ」、「あ!ホントに奥様だ。そんなに綺麗に化粧しているから間違えたんだ」、「嫌だよ。まだ化粧前だよ」。(段々と源さんのペースになってきた)女中のお喜代に酒と鰻を用意するように言い付けて、「今日はどうしたんだい」。・・・こんな調子でうまく話が運んでいたが、浅草の話になり「猿回し」と言う言葉でしくじってしまう。・・・「猿回し」でなく「皿回し」と言ったのです。とごまかしながら、また、ご機嫌を直してもらい、トントンと話が運びお小遣いまで貰うようになり、後家さんが、「・・・源さんは頭が良いんだね」。源さん「いいえ。ほんの猿知恵デス」。またしくじってしまう。


上方バージョンでは、伊勢参りのついでに奈良見物に行き、『猿沢の池』を見たと言って失敗。その後、猿沢を「『寒そうな池』と言った」とごまかし、おかみさんを『照手姫だ衣通姫だ』と言って取り繕うが、最後で『ようヒヒ(楊貴妃)』と言ってまたしくじってしまう。


「褒める」と言うのは本当に難しいですね。こんなカルタがありました。「ほ:ほめて認めてハッピーに」。大阪では「褒め殺し」という言葉もあり、褒め過ぎますと返って悪印象を与えてしまいます。よく質問されますのが、何処をどの様に褒めて良いのかわからないです。褒め所のない人はいません。何か感じたことを素直に表現すればいいのです。例えば、どんな「短所」でも、裏返せば「長所」になります。気が短い → 決断が速い、のんびり → 慎重、おおざっぱ → 器が大きい、でしゃばり → 行動力がある、気が弱い → やさしい等 たくさんありますので、先ずは、口に出してみることです。猿まね でいいのです。


「褒める」の3つの利点 

@ 観察力が磨ける A 相手が信頼してくれる B コミュニケーションがうまくいく


【なぞかけ コーナー】


申年 とかけて

受験 ととく

そのこころは

どちらも  落ちたり 滑ったりします 



川柳:夜デート 妻にばったり 猿芝居       

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