きく臓の落語歳時記      Vol.60(2013年 睦月)



【へびと笑い】


2010年7月〜3年間 お楽しみ頂いておりました『健康笑百科』も60回目を迎え還暦となりましたので ここらで一度 幕を引かせて頂きます。長い間のご支援に対し、こころより御礼申し上げます。おおきにありがとさんでした。 さて、2013年1月より、『きく臓の落語歳時記』を新企画として連載させて頂きます。今回は、四季折々の落語に出て来ます人物や行事を楽しくご紹介させて頂き、落語の楽しさ・おもしろさを再認識して頂き、生活のユーモアとして活用して頂きましたら大変光栄でございます。 この企画も末永くお付き合いくださいますように 隅から隅までズーイとお願い申し奉ります。よろしゅうお願いします。ご連絡が大変遅くなりましたこと、こころよりお詫び申し上げます。

いよいよヘビ年がスタートしました。蛇が出てくる落語はないかなと考えてみますと、 「蛇含草」があります。蛇含草と云うのは、深山に棲むウワバミが、 餌として兎や猿、時には旅人や狩人などの人間を呑み込んだ時、腹が張って苦しくなると、 消化薬として食べる草で、別名をウワバミソウと言う。東京では「そば清」として演じられている。


落語では、熊さんが大家の所へ行き、重箱一杯に入った餅を見て、オレなら全部食べられると言い出す。 食べられるものなら食べてみろと云うことになって、大家が火鉢で焼く餅を次々に食べるが、ただ食べるだけでは面白くないと、 「餅の曲食い」を始める。


最初は「放り食い」。空中に餅を放り上げ、パクッと口で受ける。次は「お染久松夫婦食い」と云って、2つ一度に放り上げる。 そして、「淀の川瀬の水車」。体の周りをグルリといっぺん回してから口で受ける。最後が成功率十分の一の難しい技「箕面の滝食い」。 空中に放り投げた餅をデボチン(額)でいっぺん受けて、ポンと跳ね返ったところを口でパクリと食べる。 餅を食い過ぎた熊さんは、家に帰ったが、腹が苦しくて苦しくて、のたうち回る。その時、人から貰った蛇含草を思い出し、 これぞ腹ごなしの消化の特効薬と、急いでその草を頬張る。女房が行ってみると、「部屋の中で餅が着物を着て横たわっていた。」が落ちである。 本当に落語らしい発想の噺で、蛇含草は餅を消化するのではなく、人間だけを消化する。そんな馬鹿なことがあるのか。 それが落語のおもしろい所である。


人間は物を食べた時、直ぐに消化してくれる薬があれば、どれだけたくさん食べても大丈夫 という卑しい考え方をしますが、 確かに直ぐには消化してくれますが、あなたを消化しますよ。世の中そんなに甘くはないですよ。また、食べ過ぎは健康にいけませんと 少し風刺も入った笑いですね。「腹八分医者いらず 腹六分薬いらず」です。


その他にヘビが登場する小噺がある。ある山に 山を7巻き半する大きな大蛇が出るとい噂があり、 ある男が、その大蛇を見るために山に行きますと 小さなヘビしかいません。その小さなヘビに、 思わず「山を7巻半する大蛇は何処にいるか」と聞きますと、そのヘビは「私です」と言います。その男は「バカ言え!  そんな小さくてどうして7巻半出来るのじゃ」と言いますと、そのヘビは「7巻半は はちまきより少し小さいのです」・・どうですか。 この笑いは固定概念を覆す笑いです。


最後に私が作った小噺をご紹介します。


動物園で大きなヘビを子供が見ていますとそのヘビが急に動き出しました。子供は思わず「ヘビさん おしっこですか」と聞きますと、 そのヘビは、子供に向かって「だいじゃ(大蛇)」・・如何ですか。単なる駄洒落の笑いですが、こんな笑いで今年も頑張っていきたく思っておりますので、 宜しくお願いします。



【なぞかけ コーナー】


ヘビ年 とかけて

デフレ対策 ととく

そのこころは

どちらも  手も足も出ません(今年は期待したいですね)



川柳:歯を磨く へびがいるのか ハブらしい   

<<柿と松茸 | 連載一覧 | 鬼と笑い>>

inserted by FC2 system